日本の木版印刷・木版画の歴史 -近代の復興 世界のHANGAへ-

木版印刷市場の衰退と木版画の再興

近代の版画運動

時代は明治へと移り、文明開化と共に海外の芸術作品や最新の印刷技術が日本へと持ち込まれました。
ここで木版業界は二度目の危機に直面します。日本と同様に中国からヨーロッパへ伝わった活版印刷が、産業革命による技術革新が行われ、めざましい発展を遂げていました。
ヨーロッパ育ちの活版印刷は日本で導入されるや、新聞や書物など文字印刷の大半を担うようになりました。さらに工業的な印刷需要は加速し、輪転印刷が開始されると、人の手によって創りだされる木版印刷は印刷市場での規模が大きく後退することとなりました。

産業としての木版印刷の需要が縮小する中、明治末期から大正期に画家や作家たちによって、木版印刷の手法を創作表現の方法として、印刷物ではなく芸術作品としての認知を広めようと「創作版画運動」が起こされます。

分業で制作するのではなく、作家が一貫して制作を行う「創作(現代)木版画」という形が確立され、山本鼎を筆頭に様々な木版作家が生まれました。

一方版元たちは、木版印刷を復興させようと、絵師、彫師、摺師たちと一体となって新たな木版印刷の形を模索し、分業制の伝統木版画の工程を踏襲しつつ、日本画の描写を取り入れた「新版画」を立ち上げました。

木版画の地位向上を目指した様々な活動は、実を結ぶこととなったのは戦後。棟方志功と池田満寿夫など代表的な木版画作家が登場し、ヴェネツィア・ビエンナーレ版画部門で最高賞を獲得したことで、日本創作木版画の美術的名声が一気に高まりました。

近代化に流されない「付加価値」を付ける技術へ

新しい価値を見出す木版印刷

急速に近代化する日本、熟練した技術を要する産業は、大量生産社会への転換によって、マニュアル化、機械化が行われ、職人の手を離れて行きました。印刷業界も同様に、高速で正確かつ大量に、継続して印刷物を作ることが可能な機械印刷が主流となりました。現代では印刷市場の規模は10兆円にも上ります。

そんな中、厳しい状況にあった、木版印刷は原点回帰によって新たな可能性を見出し、再興の道を歩むこととなります。
それが「伝統木版画」と呼ばれるの木版印刷・木版画の技術と表現方法の復古です。

伝統木版画は木版印刷伝来以来、1200年の時を重ね、様々な時代・地域の作り手たちが編み出した、人の手によるものづくりです。

技術だけでなく、木版画作りを支える道具、原料、環境、想い、これら全てにこだわって、一枚一枚作り上げられます。染み渡るような色の重なりや階調、インクや和紙の質感、「ゆらぎ」を使いこなした表現。それぞれが他の印刷技法では容易に取って代わる事ができない力を持っています。
「木版印刷」は今や作品や商品に付加価値を与え、国内外とわず高い評価を得る印刷技術です。

いにしえの印刷技術「木版印刷」

時は常に流れて行きます。木版印刷はいにしえから続く道を守りつつ今を生きています。

これからも印刷で、作り手と使い手の橋渡しをずっと続けています。
伝える仕事、それが木版印刷です。

【NEXT】「木版印刷」ってどうやって作られるの??


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