
木版画制作には多くの工程があり、その工程や表現方法に応じて様々な道具や材料が使われています。
木版印刷が日本に伝えられてから1200年もの間、彫刻刀、板、和紙、顔料、バレンなど、それぞれ日本で育まれた素材を用いて改良が重ねられたことで、木版画に使われる道具は世界でも例を見ないほどの数多くの道具たちが作られてきました。
元来全ての材料は天然の素材で作られていましたが、現在は非常に希少で手に入れることが難しくなった素材もあり、代替品や普及品が開発されるなど時代に合わせた木版画制作が行われています。
その中から「彫り」「摺り」の工程で使う主な道具・材料、そして道具を良い状態で使うためのメンテナンス道具をご紹介します。
彫りに使われる道具・材料

木槌
固い版木を広く彫る際に、ノミの柄を打ち付けることでスムーズに彫りを進める。

砥石(といし)
錆びたり欠けてしまった彫刻刀の刃先を均一に研磨することで元の切れ味を取り戻す。

美濃紙(みのがみ)
美濃(岐阜県)で作られる版下を描く薄手の和紙。版木に反転させて貼り、薄く剥がして彩色部を写す。

つばき油
版木に貼りあわせた版下絵に塗り広げることで紙を透過させ、描かれた線が浮かび上がる。
摺りに使われる道具・材料

膠(にかわ)
顔料を和紙に接着させるための動物性蛋白もしくは植物性樹脂を使った定着剤。

溶き棒
竹皮の繊維を細かく裂き、棒の先端に巻いた筆。絵具の調合や版木への色運びに用いる。

見当ノミ
摺りの基準位置「見当」を決める彫刻刀。板面に対し垂直に打ち入れて印を付ける。

手ぬぐい
湿らせて細い板に巻き付け、ぼかし摺りの濃淡表現を行う際に版木に当てて使用する。

鮫皮
ザラザラとした表面に刷毛を当て、毛の繊維を柔らかく滑らかに整える。

乳鉢
粒子の荒い絵具を細かくすりつぶしたり、固形の材料を練りあげる。

竹皮
筍が伸びて竹になる間に剥がれる表皮。バレンや溶き棒など道具の材料。