木版印刷による版画制作工程 -絵師のしごと・役割-

伝統木版画における「絵師」の役割

木版画の大元となる版下絵(原画)を描くのが「絵師」です。
絵師は今で言う「イラストレーター」の立場であり、「出版社兼ディレクター」である「版元」と専属契約を交わしてお抱えになるものや、人気絵師の場合は独立して版下絵作りを請け負いました。

絵師は版下絵を作るにあたり、時代のはやりや嗜好だけでなく制作にかかる予算や期間、対象の配置のルールなど、版元の意向に合わせて全体の構成を考えて図案を手がけました。

木版印刷における絵師として名が残されたのは「菱川師宣」が最初と言われ、『富嶽三十六景』で有名な「葛飾北斎」や「美人画」の「喜多川歌麿」も絵師であり、現代でも人気の高い作品を数多く残しています。

伝統木版画の著名な絵師と代表作

江戸初期・前記
岩佐又兵衛:京都で俵屋宗達、尾形光琳と並ぶ絵師として活躍し浮世絵の源流を築いた(大和絵絵師)
菱川師宣:浮世絵木版画の祖 挿絵本をはじめ「墨摺絵」「丹絵」などを描いた
西川祐信:上方浮世絵の祖 数多くの絵草紙本を手がけた 『百人女郎品定』
江戸中期
鈴木春信:「紅摺絵」から「錦絵」へと変遷を辿る 『夕立』『雪中相合傘』
鳥居清長:すらりとした立ち姿の美人画を得意とした 『美南見十二候』
喜多川歌麿:美人画の名手として数多くの作品を残す 『寛政三美人』『ポッピンを吹く女』
東洲斎写楽:わずか10ヶ月の間に役者絵で爆発的に人気を博した 『大谷鬼次の奴江戸兵衛』
江戸後期
葛飾北斎:稀代の浮世絵の名手として世界的に評価される 『富嶽三十六景』
歌川豊国:人気役者の魅力を理想的に描写し、数多くの門弟を擁した 『役者舞台之姿絵』
歌川国芳:発想力に富み大胆な表現で様々なジャンルで活躍した 『相馬の古内裏』
歌川広重:日本各地の風景を描いた連作を数多く発表した 『東海道五十三次』
有楽斎長秀:上方の花街を描き、合羽摺作品も手がけた第一人者 『祇園神輿洗ねり物姿』
江戸末期・明治
河鍋暁斎:戯画や風刺画、美人画、動物画まで幅広く描いた鬼才 『暁斎楽画』
月岡芳年:無残絵で衝撃を与えながら繊細な美人画まで描き分けた 『風俗三十二相』
小林清親:浮世絵の画風に西洋表現を取り入れた 『東京名所図』
大正・昭和
川瀬巴水:伝統木版画を踏襲して「新版画」を立ち上げた 『東京二十景』
竹久夢二:独特の画風で美人画を残し、装丁版画も手がけた 『黒猫を抱く女』
伊東深水:浮世絵の流れを汲んだ画風で新版画を制作 『対鏡』

絵師の仕事 伝統的木版画の版下の作り方

図案を構成する

版元から提示された制作期間や予算に制限があるため、絵師は最低限の色数を構図や色表現に工夫をこらすことで効率化を図りながら、絵筆で人物や風景などの版下絵を描きました。現在では、肉筆だけでなく、コンピューターのデジタルイラストや写真など様々な平面描写をもとにした版下絵も使用されています。

校合を作る

版下絵はまず墨で輪郭線を描きます。この墨絵は一旦彫師に渡り、輪郭線を彫った版木「主版(しゅはん)」(後述)を摺り、使用される色数と同じ数の単色墨摺絵「校合(きょうごう)」を作ります。

校合に彩色する

校合に同色の部分に手描きで彩色を行い、彫師へ色摺りの版木「色版(いろはん)」作りの指示を書き込みます。
版下絵や校合は制作過程で版木とともに削られていくため、残ることはほぼありません。

木版画の作業工程別に解説する詳しい作り方

絵師のしごと

図案を考え版下(デザイン)を描く

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彫師のしごと

構図を色ごとに分解して版木を彫る

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摺師の仕事

版木を使い分け絵柄を摺って仕上げる

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