古版木摺り 祇園祭の歴史「祇園会ねりもの行列」木版画復刻
艶やかな花街と祇園祭 途絶えた文化を今に伝える古版木を摺る
昭和初期に制作された、京の文化を伝える貴重な古版木で復刻摺りを行いました。
かつて祇園祭の神輿洗いの日に、祇園一帯では芸妓達による仮装行列「祇園会(ぎおんえ)ねりもの」が行われていました。
この模様を描いた80年前の木版画と版木が発見され、行列復活を企画する有志により、PRの一環として復刻されることになりました。
竹笹堂で摺りを承り、職人の手によって現代に蘇りました。
行列に並ぶ一行は、歴史上の人物や役者などに扮したり、お囃子を奏でたりと、多くの芸妓衆が描かれており、催しの賑わいや、装束の意匠などを現在に伝えています。
発見された版木は5枚で、現存する当時の木版画にある文字版は含まれず、人物を描写した版のみで、丁寧な彫刻が施された版木は、摺りに十分耐えうる良い状態で保管されていました。
復刻の重要な資料となった当時の木版画は、昭和11年7月10日の行列を描いたもので、版木とともに残されていました。
「八坂神社 神輿洗い祢り物繪容」と題されたこの木版画は、豪華な衣装や隊列などが細かく描写されており、役柄を1年の歳月で紹介し、参加した芸姑の名前も一人ずつ屋号と共に記載されています。
彫刻を施された色板全て良い状態で発見。
80年前の摺り。登場人物名を添えた完成品。
資料から紐解く木版画 80年を遡り当時の色彩と賑わいを鮮やかに再現
80年前に作られた木版画を当時そのままに再現するため、見本の木版画を調査し、退色や劣化の度合いを逆算して絵具を調合します。
絵具の調合は摺師の重要な仕事の一つであり、作品の出来を決める大事な工程です。また、変色した元絵から当時の色合いを判断することは経験を要する技術です。
版数は主版となる墨摺り1枚と、朱・水色・黄色・桃色の色版4枚、合わせて5枚で構成されており、様々な衣装を彩るために、色を摺った面に被せて摺ることで版数以上の色彩を表現する「かけ合わせ」の技法が用いられています。
かけ合わせによって新たに藤色・黄緑・薄緑が生まれ、豊かな描写を可能にしました。
復刻概要
- 作品名
- 八坂神社 神輿洗い祢り物繪容
- サイズ
- タテ約37cm×ヨコ50cm
- 製作時期
- 昭和初期
- 仕様
- 5版5度摺り / 山桜材版木
- 制作期間
- 約1ヶ月
「祗園会ねりもの」について
江戸時代中期から昭和初期まで行われていた祇園祭の催しの一つ。花街の芸妓衆が男女問わず歴史上の人物や役者、物語の人物などに扮して豪華な衣装をまとい、夜から朝方にかけて祇園周辺を一晩中練り歩いた。
三味線や笛などお囃子から始まり、道具持ちや山車を引き連れ、そして最後尾は後囃子で締めくくられた。道中では贔屓の旦那衆から声が掛かると、芸妓達は扮装に合わせた舞を披露して賑やかした。 この行列は100人ほどが隊をなして長々と連なり、祇園一体にはそれを目当てにした見物客でごった返すほどの一大イベントだった。
不定期に開催され続けてきたこの催しは、1960年を最後に途絶えており、その当時に撮影された写真や衣装など、貴重な資料が今に伝えている。
近年現存する当時の資料や衣装などの展示が行われており、かつて活気にあふれていたこの「ねりもの」という、一つの京都らしい文化の再興を図るため祇園の有志が尽力している。
※京都新聞資料より抜粋
この復刻事業は京都新聞で紹介され、webサイトでは木版画の画像や当時の行列の写真も掲載。