受注制作 早川聞多氏監修「錦絵春画」掲載浮世絵順序摺り

錦絵誕生250周年記念 春画研究の第一人者が監修する錦絵春画の世界

日本の性風俗を描いた春画を研究する第一人者、早川聞多国際日本文化研究センター名誉教授が監修する美術雑誌『別冊太陽錦絵春画』(平凡社刊)で、使用される資料を竹笹堂が制作し図版協力を行いました。

平凡社『別冊太陽 錦絵春画』

錦絵(多色摺り浮世絵木版画)誕生250周年を記念して発行された『別冊太陽錦絵春画』は、早川名誉教授の監修のもと、春信、湖龍斎、清長、春潮、歌麿、北斎、英泉、豊国、国貞、国芳ら日本を代表する浮世絵師10人の錦絵春画名品撰を全作品カラーで掲載し、早川名誉教授が作品と技法について解説します。

本書で錦絵の基本的な摺り手順を紹介するため、竹笹堂は喜多川歌麿が江戸で評判の美人を描いた「高嶋おひさ」を例に、錦絵の順序摺りを制作しました。「高嶋おひさ」は、輪郭線を描く主版や色版をあわせて、17回の摺り工程を経て完成します。順序摺りは、各工程で使用される色だけを摺ったものと、工程の進度を段階的に留めたものと2種類が必要です。全17工程2種を制作し、春画解説の前章として早川名誉教授による技法説明とともに掲載されました。

『別冊太陽 錦絵春画』掲載 喜多川歌麿筆浮世絵木版画「高嶋おひさ」制作過程

浮世絵木版画「高嶋おひさ」主版版木

密度が高い山桜の版木に極細の線を彫りわけられた輪郭線を描く主版。全体の印象を決める重要なパーツ。

「高嶋おひさ」順序摺り一例

順序摺りによって段階的に摺り重ねられていく場所や色、工程ごとの表現の違いを知ることができる。

日本の春画の歴史 国際的に芸術として認められる高い表現技術

春画は遡ること平安時代にはすでに存在しており、木版画の技術が向上した江戸時代、錦絵の登場によって庶民に広く普及し、飛躍的な発展を遂げました。歌麿や北斎をはじめ、浮世絵の名手たちも筆をとり、高い需要に答えるべく多くの版元が制作を手がけました。このころの春画は通常の錦絵よりも色数が多く、緻密な表現が多用されるため、制作する職人たちの非常に高度な技術を知ることができる文化的に貴重な資料です。

錦絵春画の表現技術

幅広い色彩表現

様々な色で人物に華を添える。通常錦絵は少ない色数で構成するが、大胆に表現するため複数の絵具で描き、金銀が使われる豪華な作品もある。

錦絵春画の表現技術

極細の線彫り

情事に乱れる髪の一本一本や、細い文字が場面を物語る。これらの彫刻は非常に細かく曲線が多用され、彫師の高い技術と集中力が重要。

錦絵春画の表現技術

豊富な摺り技法

着物や布団に着目するとエンボス状に細かい文様が施されている。このように空摺りや極出し、布目摺りなど摺りの特殊技法がふんだんに用いられる。

しかし、近代化を遂げる明治にかけて性愛を描く特殊性を理由に、政府の方針によって表舞台から姿を消さざるをえなくなり、以降国内での評価は一般的な錦絵、浮世絵と比較して著しく低いものでした。一方海外においてはピカソやゴッホ、モネなど著名な画家たちに影響を与え、大英博物館やボストン美術館に所蔵されるなど、春画を芸術として高く評価しました。近年そのムーブメントに後押しされ、『錦絵春画』のような画集や解説書の制作や、国内初となる春画に特化した展覧会が企画されるなど、この数年のうちに国内でも好意的に受け入れられるまでに至りました。

『錦絵春画』を監修した早川名誉教授は、春画研究を重ね、春画の価値を正しく見直す活動を長年に渡り国際的な第一人者として現在も第一線で活躍されております。竹笹堂は『錦絵春画』での制作協力を通じて早川名誉教授から春画研究を学び、木版画の技術継承・文化保護を担うものとして、春画に散りばめられた貴重な技術の復刻に取り組みます。

書籍概要

タイトル
別冊太陽 錦絵春画
監修
早川聞多
出版元
株式会社平凡社
発行日
2015年9月25日 全国書店・オンライン書店で販売
仕様
ムック / 195ページ / 28.8×21.8×1.8cm / カラー
販売価格
2,600円税別

平凡社内紹介ページ

早川聞多

美術史学、文化史学研究者。大学共同利用機関法人人間文化研究機構国際日本文化研究センター(日文研)創設当時より在籍し、与謝蕪村や浮世絵春画に関する研究に携わる。退官後、その研究の功績を讃えられ、日文研名誉教授の称号を授与される。江戸風俗・春画研究における第一人者として国内外で数々の著書・論文を発表する。

国際日本文化研究センターwebサイト


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