4分51秒でわかる竹笹堂

竹笹堂ってどこにあるの?

「竹笹堂」は、四条烏丸から西へ徒歩8分ほど、四条通から中ほどで折れ曲り綾小路通まで通る膏薬辻子(こうやくのずし)にあります。祇園祭の前祭(さきまつり)では、四条通には郭巨山、綾小路通には伯牙山が建ち、たくさんの観光客が行き交い賑わいをみせます。膏薬辻子の由来は、踊念仏で知られ現在の六波羅蜜寺を創建した空也上人が、京都の町で首を晒された平将門の霊を鎮めるため、この地(現在の京都神田明神辺り)に首塚を築き供養したことから空也供養と呼ばれ、その発音が訛り、細い道を意味する辻子と合わせて、膏薬辻子と呼ばれるようになったと伝わっています。

この石畳の辻子を進むと、京都の中心部だとは思えないほど静かで風情ある町並みが続きます。その一角、重要文化財「杉本家住宅」と塀続きにある京町家に、竹笹堂は、店舗と工房を構えています。1階店の間はオリジナル木版画・雑貨を販売する店舗、坪庭に面した座敷では木版はがき作り体験教室や浮世絵講座を開催しています。2階は木版印刷に携わる絵師・彫師・摺師が協働する工房となっています。

木版印刷って、どんな印刷? 京版画と江戸版画の違いは?

「木版印刷」は、木の板に刃物で凹凸を作り、凸部に色を付け、紙に文字や図像を摺って写す世界最古の印刷方法です。日本に木版印刷が伝来したのは飛鳥時代。仏教とともにその教えを伝える経文の文字木版が始まりです。平安後期には仏教が庶民に広がり、安価で手に入れられる仏の姿を彫った「印仏」「摺仏」が登場し、文字から絵画の領域へと日本の木版印刷は拡がりました。鎌倉時代から室町時代には『五山版』によって出版産業が盛んとなり、江戸初期に出版された本阿弥光悦の「嵯峨本」は、贅を尽くした装丁で当時から高い美術的評価を受けました。京都で生み出された版本の多くは全国に普及し、とりわけ江戸の人々に大きな影響を与えました。

やがて墨一色の「墨摺絵」から「多色摺」へと技術が向上し、「浮世絵木版画(錦絵)」が登場したことで木版の多色印刷が一気に広まり、やがて、「世界芸術の殿堂」入りを果たす江戸浮世絵木版画へと発展していきました。

町人文化とともに発展してきた浮世絵を主にする「江戸版画」が、版木に力強く摺り込み、主線(輪郭線)がくっきりとしているのに対し、「京版画」は、舞扇子や絵巻物、調度品、美術品など宮廷文化や伝統芸能とともに発展してきたため、和紙に胡粉・雲母や顔料を重ね、色(摺り)数が多く、やわらかに、ふわりと仕上げるのが特徴です。その技術で、日本画家らの原画を忠実に再現しています。伝統木版画は絵師・彫師・摺師の共同作業によって制作されますが、京版画では特に彫師と摺師が原画の魅力を損なうことなく卓越した技と技で、その風合いを表現しています。

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竹中木版 竹笹堂とは?

竹中木版は京都で1891年(明治24年)に木版印刷の摺りを担う工房として創業しました。それから130年余、印刷技術の発展により木版印刷に求められるものが変遷する中、日本画の複製から庶民の暮らしを彩る商業印刷まで、様々な京版画の伝統技法を継承してきました。

現当主4代目・竹中清八は、その古くから伝わる技術を研究し、若手職人に高い技術を伝えています。そして、5代目・竹中健司が伝統技術を未来に守り伝えるため、受注生産をしていた工房としてだけではなく、自らが新しい仕事を生みだし、B to Cで展開ができる有限会社竹笹堂を起業。工房で職人が制作したものを直接販売できる店舗も誕生しました。店舗ではオリジナル木版画作品のほか、現代の暮らしにあう工芸品の提案として、木版画のブックカバーやぽち袋など、身近な紙文具へと発想を転換して販売。徐々に雑貨好きの女性客という新しい顧客層が増えていきました。さらに、5代目・竹中健司は、6代目を1番弟子である女性職人・原田裕子に継承。原田は類い稀な才能を発揮して、伝統とモダンが融合する商品のデザインを手がけ女性客の心をつかんだことで、竹笹堂は一躍人気店に。

また、一貫して木版画を作るため彫師を有し、絵・彫・摺の工程がひとつの工房でできる唯一の会社に成長しました。現在、事業の幅は広がり、企業からの依頼による木版画をいかした商品のパッケージ提案や、全国の自社仏閣に眠る古版木や古版画の修復・復刻事業などをも手がけています。伝統技術をもって何ができるのか、常に新しい可能性に挑んでいます。

木版画職人 絵師・彫師・摺師とは?

絵師(えし)とは

木版画の原画となる版下絵(はんしたえ)を描くのが「絵師」です。かつては、現在のいわゆる出版社である「版元(はんもと)」と専属契約を交わしたり、葛飾北斎など人気絵師の場合は独立して版下絵作りを請け負いました。絵師は版下絵を作るにあたり、制作にかかる予算や期間をふまえて、材料や工程の無駄を省き、職人が効率よく動けるように全体の構成を考えて木版画に適した図案を手がけます。

彫師(ほりし)とは

絵師が描いた版下絵を元に木版画の原板となる「版木(はんぎ)」を作る彫師。1色ずつ色を重ねても紙がずれない「見当(けんとう)」という印を寸分の狂いなく、ぴったりと仕上げる正確さや、色を重ねて表現するための版分けを行うなど、後の作業効率に関わる重要な工程を担います。彫師は彫刻刀の刃先を0.1mm単位で板面に入れ、筆で描かれた質感を版木に再現するという細かく丁寧な技術と、何より高い集中力が欠かせません。

摺師(すりし)とは

バレンで絵具を和紙に摺りこみ、色を重ねて作品を仕上げる「摺師」。何百、何千枚もの木版画を同じ品質で制作する、微細な差異も逃さない鋭い感覚が必要です。基本色の顔料を調合し無限の色の組み合わせから的確な分量を膠(にかわ)で溶く、使用する和紙に水分を与えて湿す、など準備が大切です。このような段取りは作品の仕上がりを左右する要であり、気温や天候、季節にあわせて行う長い経験によって培われていきます。鉱物を用いる雲母(きら)摺りや、浮世絵のグラデーションのぼかし技法など、摺りの表現は多岐にわたり作品に表情を与えていきます。

職人一覧

竹笹堂ができること まとめ


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