
木版印刷について
現在、年代が明確になっている世界最古の印刷物は、法隆寺などに現存する仏教の言葉を記した「百万塔陀羅尼(ひゃくまんとうだらに)」であるといわれています。
それ以来、木版印刷技術は主に経典などの普及のために活用され、鎌倉時代・室町時代には、五山版などの寺院版が木版印刷の主流になりました。
その後、江戸時代になると、それまで単色だった木版画は色鮮やかな浮世絵へと発展し、庶民の生活に深く入り込むようになりました。浮世絵だけでなく、メンコやカルタ、花札なども木版印刷によって作られ、多種多様な意匠の印刷文化が栄えました。時を経て昭和に機械印刷が本格的に普及するまでは、木版印刷が印刷の主流でした。
印刷技術について
現在、世界にはさまざまな印刷手法が存在しますが、主要なものとしては、オフセット印刷、シルクスクリーン、銅板印刷、そして木版印刷が挙げられます。
「オフセット印刷」は平版・凸版など様々に分類されます。金属の版に載ったインクをゴム筒に移し、その後、紙に付着させる印刷方法です。正確で低コスト、高速で大量の印刷が可能ですが、一方で設備投資など初期費用が大きいというデメリットがあります。
「シルクスクリーン」は孔版に分類され、メッシュ状のシルクの生地にインクを載せて印刷する手法です。安価で印刷できる一方、オフセットに比べて耐久性に乏しく、大量印刷に向きません。
「銅板印刷」は凹版に分類され、特に西洋で多く用いられてきた手法です。銅の板に溝を掘り、その溝にインクを詰め、紙に写し取る印刷方法です。精緻な表現が可能な一方で、コストや手間の面で版数を増やすことが大変であるため、版の数は5枚程度までと少ないことが多いようです。
「木版画印刷」は凸版に分類され、世界的にも古くから続く印刷方法です。筆文字や人物画などにおいては、浮世絵に代表されるように、肉筆に迫る深みのある表現が可能である点が最大の魅力です。
現代においてもなお、世界的に日本の木版画が高く評価されているのは、人間の手でしか表現できない線と、その精緻な表現力、和紙の質感や絵具のにじみなどの魅力が、その理由としてあげられます。
木版画制作の工程について
絵師が下絵を描き、それを彫師が版木に彫刻し、それを用いて摺師が和紙に摺りを施す。このように伝統木版画では、三者の分業制になっており、それぞれの高い技術を持って最高の作品を制作しています。一方、作家による木版画作品は、「絵」「彫り」「摺り」のすべてを1人で行い、芸術性の高い作品を制作しています。
木版の組合/組織について
現在、日本における木版画職人組合は、京都木版画工芸組合、東京木版画工芸組合があります。また、木版画制作の出版元となる「版元」の組合は京都版画出版協同組合、東京伝統木版画協会があります。その他には、浮世絵木版画を保存継承するための文化庁選定「浮世絵彫摺技術保存協会」、浮世絵を学術研究する学会、国際浮世絵学会があります。
一昔前までは木版職人は全国に存在し、神戸、大阪などにも組合組織がありましたが、現在は京都と東京の2地域になっています。
竹中木版のわざ
手摺り木版は、その名のとおり、すべて手作業で制作しています。ひとつの木版画を制作するために、彩色の種類によって何枚もの版木を彫刻し、その一枚一枚に色で表情を付け仕上げていきます。
竹中木版の「摺り」は、色は胡粉(ごふん)や雲母(きら)といった京都独特の材料を取り混ぜながら、何色もの顔料を調合して作ります。この調合は長年の経験と代々受け継がれる調合記録によって決まります。
摺りの作業は、先ず調合した顔料を版木にのせ、刷毛でなじませ、その版木の上に和紙をあてて「ばれん」で摺っていきます。現在の当主、竹中木版四代目竹中清八は「力を抜くことが大事なこと」と言います。このようにして、受け継がれた技術を存分に駆使し、伝統木版画はつくられるのです。
古版木
木版画の歴史は深く、現在でも時を経て眠っている貴重な版木が数多く存在しています。しかし、古版木は経年による劣化が進み、その復刻は非常に高い技術を要するものとされています。
竹中木版は、古版木を特殊な手法をもって摺り上げ、現在に蘇らせるという、他にはない技術を有しています。
作品として蘇った時には、深い感慨をおぼえるものであり、多くの方々にその感動を伝えることができるものであると考えます。
竹中木版は、一枚の木版画の中に込められている手の温もりや手法の数々、そして日本独特の素材を大切にしながら、今後も心に触れる作品を制作していきたいと考えています。















